相談の場面
取引のある小売バイヤーから、こんな相談が持ち込まれた。
「サイズが規格に満たないヒラメが、産地で相当量廃棄されているらしいんです。品質は変わらないのに、もったいない。カネセさんの方で、何か商品にできませんか」
規格外品は鮮度が落ちやすく、そのまま刺身として流通させるには輸送や保管のハードルが高い。しかも規格外という理由だけで安く買い叩かれるか、廃棄されるかのどちらかというのがそれまでの常識だった。
向き合い方
「規格外だから無理」で終わらせず、まず何が商品化を阻んでいるのかを分解した。ネックは鮮度劣化のスピードだった。それならば、鮮度を落とさずに保存する方法があれば話は変わる。
当時導入を検討していたCAS(Cells Alive System)冷凍技術に着目し、「凍結による品質劣化を最小限に抑えられれば、規格外でも刺身グレードの商品として売り場に出せるのでは」という仮説を立てて、バイヤーと一緒に検証を進めることにした。
検討プロセス
CAS冷凍設備の導入コストと、規格外品の想定仕入れ量・販売価格を突き合わせ、採算が合うロットの見極めから始めた。小売店側でも「まずは限定的な棚での試験販売から」という条件で合意し、双方のリスクを抑えながら進める計画にした。
スケジュールは、設備導入・凍結条件の検証・試験販売までを含めて4ヶ月。段階を区切ることで、途中で条件を見直せる余地を残した。
研究・プロセス化
ヒラメは水分量が多く、凍結速度によって食感が大きく変わる。CAS冷凍機の設定を魚種・厚みごとに何度も調整し、解凍後の食感と色合いが天然の刺身に近づく条件を突き止めていった。
同時に、規格外品を受け入れてから凍結処理に回すまでの動線も見直し、鮮度を保ったまま処理できる体制を工場内に整備。試験販売では想定以上の反応があり、そのまま定番商品化することになった。
継続・蓄積
この経験を通じて確立したCAS冷凍のノウハウは、ヒラメ以外の魚種にも応用され、現在はワカメしゃぶしゃぶ用の商品などにも活かされている。
「規格外だから商品にならない」という前提を疑うところから始まったこの相談は、いまではバイヤーアシスト事業の中核をなす技術基盤になっている。
同じような「やったことない」を、いま抱えていませんか。